年金・福祉などの社会保障制度には、同じ世代の中での支え合いと異なる世代の間での支え合いの両側面があります。少子高齢化の進む日本において社会保障制度が長期・安定的に維持されるには、世代間のバランスが重要となります。国民移転勘定(National Transfer Account=NTA)は、世代間の所得の経済的移転の状況を体系的かつ包括的に分析する手法であり、近年、分析方法が精緻化され、2013年に国連でマニュアルが整備されており、この推計事業に参加する国が増加しています。この特集では、NTAの研究動向の現状、これをめぐる最近の話題及び今後の課題について、第一線で研究を行っている専門家が解説します。
巻頭言「国民移転勘定(NTA)の成り立ちと現状」
日本大学経済学部准教授 松倉 力也
「国民移転勘定(NTA)が示す新しい少子高齢化分析:日本のケースを中心に」
日本大学経済学部准教授 松倉 力也
「国民時間移転勘定:無償労働によるNTAの拡張」
国立社会保障・人口問題研究所企画部
第2部長 福田 節也
「NTA-NTTAの主要編集の考え方と特色について」
国立社会保障・人口問題研究所社会保障基礎理論研究部
第1室長 佐藤 格
「国民移転勘定に基づく最近の研究動向と今後期待される展開」
アジア開発銀行研究所客員研究員 小川 直宏
月刊『統計』は、統計の発展・普及に貢献することを目的として日本統計協会が発行する統計の専門誌です。主な読者層は、様々な分野において『統計』の研究、教育、実務に携わる方々です。社会・経済の身近な話題に関する統計分析や解説を掲載し、統計をこれから学ぶ人にも親しんでいただける内容となるよう努めています。本誌を通じて、統計を楽しみながら学んでいただければ幸いです。